はじめに

人それぞれのところはあるのでしょうが,私は日々文章を書いています.最近では,実用的文章に飽き足らず――あるいは,その機会が一時的に減ったこともいいことに――,非実用的文章(小説,SS,怪文書,その他)もしたため,あまつさえ一粲に供しているところです.そのためにはいくつかのツールを使っているのですが,思えばそれをまともに文章化したことはないことに気づきました.そこで,長らく放置していたブログの編集方法を思い出しかたがた,それをまとめてみました.なお,私は何かの回し者ではないので,念のため.

Obisidan

何はともあれ,まずは書き付けるためのプラットホームが必要です.いきなり pixiv などの下書きを作成してもいいのですが,それだと操作ミスなどで不意にデータが消失するおそれがありますし,せっかく作ったものですから,手元でしっかり管理しておきたいものです.そこで,しっかりと文章を保存でき,さまざまな環境――少なくとも Windows と iOS――で利用できるようにしています.

以前は,idraft というサービスのプレミアム版を利用していました.これは,フォルダーに分けて文章を管理できるのみならず,表記揺れや類語の提案など,小説作成に有用な機能も備えていました.しかし,2025 年 3 月をもって終了してしまいました.

そこで,現在では Obsidian を利用しています.大雑把に言えば,その実体はプレーンテキスト(Markdown ファイル)ですので,自分でどうとでも管理できるという利点があります.私は,リポジトリを iCloud Drive に置くことで,いろいろな環境で利用できるようにしています.小説本体のほか,後に示す解析結果も保存しています.ただ,同期には若干のタイムラグがありますので,編集の競合には注意する必要があります.また,小説に特化したサービスではありませんので,後に述べるようなツールで校正などの機能を補う必要があります.

ATOK と 一太郎

いくらボタン一つで漢字変換ができるご時世とはいえ,何でもかんでも漢字にしては読みにくくて仕方がありません.また,何気なく使っている表現でも,実は非標準的で,読んだときに思わぬ引っかかりを生じてしまうかもしれません.また,ひとしきり書いた後は,表記揺れや誤字脱字がないかを確かめる必要があります.

そこで利用しているのは,日本語入力システムの ATOK と,ワードプロセッサーソフトウエアの 一太郎 です.

ATOK は,最近では Windows のみならず iOS 環境でも利用できるので,いつでもどこでも快適な文章作成が楽しめます.特に,Windows 版では,『共同通信社 記者ハンドブック辞書』第 14 版などの用字用語辞書と連携し,過度に難しい表現――とはいっても,場合によっては自分の表現を優先することもありますが――や表記揺れを避けることができるほか,『角川類語新辞典』などの類語辞書で連想変換を強化することで,文章に彩りを与えることもできます.個人的には,句読点の切り替え(通常の句読点からカンマとピリオドへ,あるいはその逆)がスムーズなのも気に入っています.

また,一太郎は,直接そこで文章を作成するというよりも,Obsidian などで作成したものをコピー・アンド・ペーストして,文章校正をかけるのに使用しています.小説に特化した校正設定もあるので,ストレスなく投稿前の見直しができます.また,ブラウザー連携として JUST チェッカーというものも同梱されており,pixiv 上などで直接文章を編集する際にも,一太郎の校正エンジンを利用することができます.

大規模言語モデル (LLM)

念のため述べておきますが,私はタグ等で特にそう記載しない限り,pixiv で言うところの AI 生成作品 に該当する作品は公開していません.一次創作で一度だけ試してみて,それっぽく読めるものはできた(それは現時点で掲載しています)のですが,あまりおもしろくはなかったというのが正直な感想です.自画自賛のようであれですが,トンチキな展開やら,私が好むものは,やはり自分で書くほかないようです.だからこそ,筆を執る――いや,キーボードをたたくか――気になったのですから.基本的には,以下に示すように,小説作成前の下調べや,作成後の見直しと解析を中心に用いています.また,自分の書いた作品以外を,LLM に処理させたことはありません.正直なところ,本業では LLM の台頭によって自分の得手(英語とかプログラミングとか)がつぶされているところはあるのですが,便利なものは確かなのでやむなく使っているという複雑な状況にあります.

私は,Poe のプレミアムプラン(1 万ポイント/日または 100 万ポイント/月,利用状況により変えています)を利用しています.異なる種類の LLM を,同じプラットホームにおいてワンストップで使用し,比較検討できるのがいいところです.最近は,主に GPT-5, Gemini-2.5-Pro, Claude-Sonnet-4, Grok-4 あたりを使っています.私の場合には数万字程度の文章を処理することが多いので,コンテキスト長が十分にあり(1 字/トークンと仮定して文章量の 10 倍程度,コンテキスト管理は OFF にする),必要に応じて推論するようなモデルを利用しています.近頃は,LLM がこれまでの入力履歴を保持して,利用者におもねったりおもねらなかったりするのが話題となっていますが,私の場合には API 経由だからか,そういったものには悩まされずに済んでいます.もし迷うようなら,とりあえず Gemini-2.5-Pro を既定の推論レベルで使うとよさそうです.

ユースケースの一つとしては,小説を作成する前の下調べです.たとえば,登場人物が店舗でお好み焼きを焼いて楽しむ場面を書こうとしているとします.ここは簡潔に済ませず,紙面を割きたいのですが,あいにくそういう経験がないので書きづらいとします.このとき,LLM に以下のように尋ねます.

関西風お好み焼き店の中には、客に鉄板で焼かせたり、生地をひっくり返させたりするところがあります。その場合、店員から提供されてから、実際に客が喫食するまでのプロセスはどのようになるでしょうか。必要ならば、お好み焼きにはエビ、カニ、ホタテなどの具が含まれるとしてください。

すると,たとえば以下のように回答してくれることでしょう.

関西風お好み焼き店で、客が自分で焼く場合、提供から喫食までのプロセスは、大きく以下のようになります。

  1. 注文: まず、食べたいお好み焼きの種類(豚玉、イカ玉、ミックスなど)を注文します。エビ、カニ、ホタテなどの海鮮入りを希望する場合は、その旨を伝えます。

  2. 材料の提供: 店員が、ボウルに入った混ぜ終わった生地、注文した具材(エビ、カニ、ホタテ、豚肉、キャベツ、天かすなど)、油、ヘラ、小皿などを持ってきます。

  3. 鉄板の準備: 鉄板が十分に温まっていることを確認します。店員が油をひいてくれる場合もありますが、自分でひく場合もあります。

  4. 生地を焼く: ボウルに入った生地を鉄板に丸く広げます。厚さは均一になるように注意します。

  5. 具材をのせる: 生地の上に、豚肉、エビ、カニ、ホタテなどの具材、そしてキャベツをのせます。具材は生地全体に均等に広げます。

  6. 焼き加減の調整: お好み焼きの底面が焼き色がつくまで、中火~弱火でじっくり焼きます。焼き色がついたら、ひっくり返すタイミングです。

  7. ひっくり返す: ヘラを2枚使って、お好み焼きをひっくり返します。この時、形が崩れないように注意が必要です。上手くひっくり返せない場合は、店員に手伝ってもらうのも良いでしょう。

  8. 反対側を焼く: ひっくり返した面も同様に、焼き色がつくまで焼きます。エビ、カニ、ホタテなどの海鮮は火が通りやすいので、焼きすぎに注意します。

  9. ソース、マヨネーズ、青のり、かつお節をかける: お好み焼きが両面とも焼きあがったら、鉄板の上で、お好み焼きソース、マヨネーズをかけ、青のり、かつお節を振りかけます。店のスタイルによっては、店員がソースなどをかけてくれる場合もあります。

  10. 切り分ける: ヘラを使って、お好み焼きを食べやすい大きさに切り分けます。

  11. 喫食: 鉄板の上で熱々のお好み焼きをヘラで取りながら食べます。小皿に取り分けて食べることもできます。

お店によっては、焼き方の手順を説明してくれる場合もあります。初めての場合は、店員の指示に従うか、焼き方を尋ねると良いでしょう。また、エビ、カニ、ホタテなどの海鮮は、火を通しすぎると固くなってしまうので、焼き加減に注意することが大切です。

当然ながら,これをうのみにしてはいけません.場合によっては,順序や因果関係がおかしくなっている可能性もあるからです.一通り読んで,問題がなさそうであれば,後は自分の表現で,作品に盛り込むまでです.

もう一つのユースケースとしては,作成後,投稿前の見直しです.上記の ATOK や一太郎による校正で,文章表現上の誤りはある程度正されているはずですが,記述の不足や誤りで,本来伝えようとしているメッセージが伝わらないことがあるかもしれません.そこで,以下のようなプロンプトとともに Obsidian の Markdown ファイルを読み込ませ,方向性がずれていないかを確かめることがあります.なお,ここではあるメディアミックス作品の二次創作を例にして,実際に使っているものを簡略化しています.

説明

入力について

ここに入力するファイルにはメディアミックス作品『〈作品名〉』から着想を得た小説が記載されています。この小説のタイトルは、ファイル名に記載されています(ただし、拡張子があれば省くこと)。〈種族名〉は、当該作品およびこの小説で特に断りがない限り、ヒトと社会的、医学的にほぼ同一視できると仮定してかまいません。

出力について

以下では、この小説を分析するために、いくつかのタスクを提示しますので、回答してください。タスク中に、特に定めのない限り、日本語で回答してください。また、回答を見やすくするために、Markdown 記法を用いてもかまいません。ただし、見出しを出力する場合は、第一レベル・第二レベルの # や ## は使わずに、第三レベル ### 、第四レベル #### 、第五レベル ##### ……を順に使用してください(ちょうど、この説明書きで使われているように)。たとえば、“foo” という名前の見出しを第三レベルで作成するなら、一行に “### foo” と記載してください(当然ながら、実際には二重引用符を省く)。その他、Markdown の文法やコンベンションには準拠してください。

タスク

まずは、以下のタスクを実行してください。(1) この小説の内容を要約してください。要約文は長くなるかと思われますので、必要ならば、いくつかの段落に分けたまとまった長さの文章としてもかまいません。(2) この小説の中心的テーマを説明してください。(3) この小説のタイトルの意味を説明してください。

ここでは見出しを第三レベルからにするように指示していますが,これは私が解析結果を Obsidian で管理するためのもので,必要に応じて省いてもかまいません.全体の解析――上記のほか,規程に準拠しているかも合わせて――の後は,それぞれの文単位で趣旨を説明させるなど,さらなる見直しをすることもあります.

おわりに

ここまでいろいろと書き連ねてきましたが,ほかにもいちいち自覚せずに用いているツールがあろうかと思います.特に,上記でもいくつか辞書の名前が登場しましたが,当然ながら文章作成には紙辞書や電子辞書(専用機のほか,「辞書 by 物書堂」アプリのコンテンツ)も活用しています.これについては別の機会に書きたいと思います.創作に携わっておられるほかの方々におかれましても,もし採用されている工夫等がありましたら,教えていただけますと幸いです.